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きつく、力強い抱擁。
海斗の不安や動揺がダイレクトに伝わってくる。
それが辛くて、私も海斗の背中に腕を回し強く抱きしめた。
耳元で、海斗の吐息が揺れて乱れる。
「何故なんだ…何故遊里なんだ!!何故…俺の大切な物を奪おうとするんだ!!」
その言葉が誰に向けられたものかは分からなかった。
でも…きっと、『運命』に向かってなのだと思う。
海斗を深く傷つけた。
震える広い背中が辛い。
どんな言葉をかけたら良いのかも分からず、ただ抱きしめるしかなかった。
「ダメだ!遊里…死ぬな…俺を遺して死ぬな!!お前を失いたくない…お前を…」
泣き叫ぶみたく。
海斗が耳元で言葉を吐き出す。
『うん死なないよ。大丈夫だよ。』
そう言えばきっと海斗は安心するのに、それが言えないのが苦しい。
こんな時でも、嘘はつけない。
ついたって…私が死ぬ事実は変わらないんだから。
余計に海斗を傷つけ混乱させるだけだ。
「ごめんね…ごめんね海斗っ…」
「嫌だ。許すと思うのか!俺より先に死ぬなんて…こんなに愛しているのに!!」
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