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翌日。
病院に向かう車内で、私は海斗に肩を抱かれ手を握りしめられていた。
私も海斗の肩に頭を乗せ身を委ねる。
「…考えていたんだ。」
不意に海斗が口を開き、呟いた。
「お前の手紙の内容を。お前が、伝えたかった事を。」
昨日とは違い、落ち着いた海斗の声が耳をくすぐる。
「……生きる、俺は。」
「海斗…」
「遊里を失っても、生きていくと約束する。大切なものを守って、お前が好きだという俺の笑顔を絶やさずに。」
そっと海斗の顔を見上げると、優しい笑みが返ってきた。
その笑顔に胸がいっぱいになる。
「…そうしないと、お前は天国で俺を待っていてくれないかもしれないからな。」
「…そうだよっ!約束なんだからね…」
涙目になった私の髪を撫で、額に触れるだけのキスが落ちてきた。
「俺は約束は守る。特に、お前との約束は絶対だ。」
強い意志の伝わってくる、海斗の瞳。
その目はもう赤くなかったけど…私は知っている。
昨晩、私が眠った後…海斗が泣いていた事。
声を殺し、私を抱きしめたまま。
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