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私はそれに気付いたけど、寝たフリをした。
海斗はきっと気づかれたくないだろうと思ったから。
それでも、海斗の震える体が辛くて、私もひっそりと涙を流した。
どんな気持ちで私の手紙を読んだのだろう。
そしてどんな気持ちで今笑っているのだろう。
考えるとやりきれない。
死なないでくれと言った海斗の声が、頭から離れてくれなかった。
悲痛な涙と泣き声が…ずっと私の頭の中に残っている。
「海斗…ありがとう。………ごめんね…」
「…謝るな。お前は何も悪くない。もう二度と謝らなくていい。」
髪を撫でる海斗の指が震えていた。
何かを懸命にこらえているんだと思う。
それは怒りなのか悲しみなのか…私には分からなかった。
病院は相変わらず混んでいた。
海斗が私と共に待合室に入っていくと、途端に視線が海斗に集中する。
やっぱり目立つなぁ海斗は…。
これだけ良い男なんだもの。
若干苦い気持ちを感じつつ、椅子に並んで腰を下ろした。
海斗がまたさりげなく手を握り励ましてくれる。
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