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病院の香りと、この独特な雰囲気。
そのせいで不安が増長していく。
これから告げられる事が分かっていても…緊張で体が強張った。
「…大丈夫だ。俺がずっと傍に居る。お前が泣いても怒っても、抱きしめて受け止めてやるから。」
落ち着いた低い声が耳元をくすぐる。
小さく頷き、その肩にもたれかかった。
なんて…温かい人なんだろう。
自分だって悲しいし不安なはずなのに、こうして私を支えてくれる。
海斗と結婚して…この人と共に生きられて、本当に私は幸せ者だ。
愛していると、死ぬまでに何百回も何千回も海斗に伝えよう。
海斗に私の笑顔をたくさんたくさん贈ろう。
笑っている私だけを、記憶に留めていてくれるように。
考えながら目を閉じた時。
待合室によく通る高い声が響き渡った。
「結城さ~ん、結城遊里さ~ん!2番の診察室へお入り下さい。」
「…」
「はい。」
咄嗟に返事をためらった私の代わりに、海斗が返事をして私を立たせてくれる。
「…おいで。行こう遊里。」
海斗に手を引かれるまま、私は診察室のカーテンをくぐった。
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