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「遊里にとっては、それは幸せではないのだと。遊里を悲しませるだけなのだと。」
「海斗…」
「この手紙の通りだ。俺には…守っていくべきものがこの手から零れる程たくさんある。そしてそれは…絶対に溢さず守らなくてはならないものだ。……俺は心底お前には勝てない。お前に言われるまで、俺は全てを捨ててもお前の後を追えると思っていたんだからな。」
海斗の私への愛はそれ程までに深い。
だからこそずっと私を守り、私だけを愛してきてくれた。
それは素晴らしく嬉しい事であり、でも危うくもあった気がする。
「手紙を読み、お前の深い愛と願いを何度も頭の中で繰り返した。そして自分の意思で決めた。……俺はお前が先に死んでも、後を追えない。遊里への愛を胸に、生きて行く。その結論に至った時…情けない程に涙が出た。一緒に死ねない事が、悔しいと思ってな。」
きっと、昨日の夜中一人で泣いていた時の事だ。
海斗は必死に考え、自分の中で決断したのだ。
『生きていく』と。
「……大切な物や、自分の気持ちを改めて見直す良い機会だった。…遊里、お前にとってもそうだったんじゃないのか?」
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