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海斗にお腹の痛みの話しをしなかったのは、単に「心配させたくなかったから」というだけではない。
言葉にして誰かに話してしまう事で、不安が増長してしまうような気がしたからだ。
「不安は誰かに話せば楽になる」という人もいるけど、こういう事に関しては例外のような気がする。
症状を他人に説明して聞かせれば、必ず「病院に行かなくちゃ!」と言われるだろう。
でも…そう言われたら、もっと不安になってしまう気がしたのだ。
「…でもこんな事なら早めに病院に行っておけば良かったかな…。」
一人きりの寝室でポツリと呟く。
発熱する前に行けば良かった。
今更思っても仕方ないが、熱があると気弱になってうじうじと考えてしまう。
病院に行こう。
それはこの4日間度々思った。
痛くなる度、張りを感じる度。
でも、何故か病院に行くのが「恐い」と思ってしまったのだ。
「っ…」
あれやこれや考えていたら、再び下腹部が痛み出した。
同時に張ってきて、布団の中で身を縮める。
痛みと格闘し30分程が経った頃、ようやく痛みから開放された。
そして今のうちに、と体温計を口に入れて熱を測ると、数字を見て気を失いかける。
「……39度って…」
言葉にすると余計しんどくなり、私はそっと内線に手を伸ばした。
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