現実となる不安

2/7
前へ
/90ページ
次へ
海斗にお腹の痛みの話しをしなかったのは、単に「心配させたくなかったから」というだけではない。 言葉にして誰かに話してしまう事で、不安が増長してしまうような気がしたからだ。 「不安は誰かに話せば楽になる」という人もいるけど、こういう事に関しては例外のような気がする。 症状を他人に説明して聞かせれば、必ず「病院に行かなくちゃ!」と言われるだろう。 でも…そう言われたら、もっと不安になってしまう気がしたのだ。 「…でもこんな事なら早めに病院に行っておけば良かったかな…。」 一人きりの寝室でポツリと呟く。 発熱する前に行けば良かった。 今更思っても仕方ないが、熱があると気弱になってうじうじと考えてしまう。 病院に行こう。 それはこの4日間度々思った。 痛くなる度、張りを感じる度。 でも、何故か病院に行くのが「恐い」と思ってしまったのだ。 「っ…」 あれやこれや考えていたら、再び下腹部が痛み出した。 同時に張ってきて、布団の中で身を縮める。 痛みと格闘し30分程が経った頃、ようやく痛みから開放された。 そして今のうちに、と体温計を口に入れて熱を測ると、数字を見て気を失いかける。 「……39度って…」 言葉にすると余計しんどくなり、私はそっと内線に手を伸ばした。
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4898人が本棚に入れています
本棚に追加