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誰かが呼んでる気がした。
目を開けたら一面の青空だった。
雲ひとつ無く澄みきった、吸い込まれる様に、沈んでいく様に、青い空。
右手が自然と空に向かって伸びた。
何かを掴みたいのか、何かに掴まれたいのか。
それはその手の主、本庄武志(ほんじょう たけし)本人にもわからない。
ただどちらにせよ、その手は何も掴めていなかったのは事実だ。
いつも、どんな時も。
掴みたくても、何も掴めなかった。
諦める様に手を降ろそうとした瞬間だった。
武志の右手が手甲に掴まれ、強い力で引っ張られた。
強制的に身を起こされ戸惑う武志は、手甲の主を見上げた。
173cmある武志が見上げる形になるのだから、その手甲の主は軽く見ても2mは越えている大男である。
大男――西洋騎士の様な甲冑に身を包んだ大男は唯一剥き出しになっている顔の筋肉を少しだけ動かした。
微笑みで和まそうとしているのだと、その不器用にひきつった表情から武志は読み取った。
こちらも笑い返すのが礼儀かと思ったが、そうもいかない。
礼儀云々以前に自分が今置かれている状況を把握できていなかったからだ。
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