プロローグ

2/2
29人が本棚に入れています
本棚に追加
/60ページ
―夢を見ていた。 ボクはただ闇の中に立っていた。 何も見えない…… ただ全てを飲み込む[黒]の中に  ―ねぇ、貴方は飛べるの?― ボクの中に聞こえる声。ボクに問いかける声。  答えることができないままボクの意識は遠のいていった― 暖かな光。青い空。小鳥のさえずりに少女は目を覚ました。 「っあぁ、もう朝か」 軽く背伸びをし、そう呟くと、少女は身支度を始める。 ウィン=ルブラン、それが少女の名前。 身長は130センチ前後のとても小柄な少女。 ――ウルガルド……どんな学校なのかな…… 少女は背中にある翼を撫でた。 生まれたときからあったらしい背中のその翼は、成長するとともに大きくなった。 純白で凛としたその翼はとても美しかった。 例えるならば天使の翼と言えば、想像もしやすいだろうか。 しかし、実際はそんなにいい印象は持たれていないみたいだけど…… 夢で聞かれた質問を思い出す。 “―貴方は飛べるの?―” こたえきれなかった言葉……そして今もこたえられる自信はない。 ただ分かるのは、きっと飛ぶこと自体はできる。 でも、飛んだりしたら…… また避けられる原因になること。 今までだって、この翼のせいで周りの人に「魔物の仔」って避けられ続けた。 「さてと……そろそろ行かなくちゃ」 少女は緑色の長い髪を同じ色のひもでポニーテイルに結んで立ち上がり、制服代わりのローブをはおった。 今日は、騎士育成校・ウルガルドの入学式だ。
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!