望みの扉

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「何だか、去年の上田に...似てるな...」 去年、ここで再会して 入ったばかりの新人で... 客に 『ありがとう』 などと言われた上田は ホントに嬉しいそうにしていた さっき 新人の女の子の様に... 「...ダメだ...」 「...こうしてると、上田の事を考えちまう...」 押し退けた ハンバーグを 引き寄せて フォークで切りわけ 小さいハンバーグの 欠片を食べる 冷めるくらいまで ずっとそうやって 食べていた... サラダに至っては レタスをしゃぶる様に くわえたまま カリカリとちょっと ずつ食べた 食べ終わる頃には 暗くなり始めていた 窓からは 茜色に染まり 藍色に変わりだす 光が差し込み 空になった皿と フォークとナイフを 染めこんでいた... すると 入口から カランカランと いう音が聞こえ つい、体を乗りだし 覗いてしまった... 「.........」 違う上田ではなかった 昨日... ひっぱたいてくれた バイトの女の子だった どうやら 今日もこれから シフトらしく 奥に向かっていた... 「.......!?」 彼女はオレに気づいた
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