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だから代わりに、アレンも胸の内で決意した。身の危険を冒してまで『力』を取り戻そうとするシャルを護ろうと。それがシャルの人生を歪めてしまい、挙げ句残酷にも諦めるなと言い放った責任なのだと幼いなりに考えた。
「おにいちゃん、おふろあいたよっ」
身体からホクホクと湯気を立ち上らせながら、イリスが部屋の扉を開けた。
「うん、わかった」
ベッドから立ち上がって、入り口で擦れ違いざまに銀髪を撫でた。
笑顔を浮かべながら擽ったそうに首を傾ける少女は、多分アレンが魔法学部に行くと言えば付いてくるだろう。そうなれば、イリスも魔物と戦うことになる。
ある程度なら平気かもしれないが、そこでイリスの正体がバレ兼ねないような魔法を使わせる訳にはいかない。こちらもまた、アレンが護る必要があった。
階下へ降りて、風呂場の前にリビングに寄る。
ノアは言っていた。誰かを護りたいのなら、意志だけでは駄目なのだと。それには、相応の『力』を身に付けなければならないと。
果たしてどれほどの『力』が必要なのかは判らない。それでも、大切な人達を護る為に、強くなってみせる。
「ねぇお母さん、話があるんだけど――」
† † †
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