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『コーデリア=ブロウズ、此処に眠る』
墓石には、そう刻まれていた。
二人が六年生に上がってすぐのことだった。年末から崩していた体調が悪化し、そのまま……。
医者からは本来、四年生の年末の時点で安静を言い渡されていたらしい。それを一年以上も引き伸ばしてみせたのは、きっと彼女の強い意志が病を押し退けたからだろう。眠るように息を引き取った最期の時まで、シャルの身を案じていたそうだ。
シャルには、何故ブロウズがそこまで自分を気に掛けてくれたのかは分からない。
学園の先生として顔を合わせるよりさらに以前から母の知り合いとして可愛がられていて、シャル自身は本当の家族のように感じていたが(本人は未だに気付いていないが、だからこそ『弱音』を吐いてはいけないと言いながらも、彼女には度々泣き言を言っていたのだ)、それでも今際の際にまで案じる相手は、普通ならば実の家族だろう。
けれども、自分が身も心も彼女に救われた事実がなくなる訳でも、彼女への恩義が揺らぐ訳でもない。寧ろ葬式の墓前で決意をより強固なものにしたくらいだ。
声には出さず、語り掛ける。
(先生。私、『力』を取り戻しました)
何度も何度も、挫けそうになった。
取り戻す直前も、一度諦めてしまった。
その度に、周りの人達が力になってくれた。
あの時言っていた『世界』のおかげで、成し遂げられた。
先生が教えてくれた通り、弱音を吐きながらも前に進めた。
まだ、自分にとっての『幸せ』が何なのかは解らないけれど、
(それもきっと、見付けてみせます)
膝を着いて、祈るように手を組みながら、シャルは誓いを立てた。
その傍らで、アレンも墓を見下ろす。
(先生。この前、シャルが魔法を取り戻したんです)
血の滲むような努力をして。
折れても挫けても、最後には立ち上がって。
多分、悔しい思いをいっぱいして。
きっと、先生の言葉を信じ続けて。
六年掛かって、やっと心からの笑顔が戻った気がした。
(まあ、その直後に死に掛けたんですけど)
今だから冗談のように言えるが、それでも少し顔が引き攣ってしまった。
そのまま、その時のことを思い出した。
(……その時俺、本当に弱いんだなって思い知らされました)
強くなると誓った。
傍にいると誓った。
力になると誓った。
護ってみせると誓った。
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