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アレンは、筆記試験を全て一夜漬けで乗り切っている。一応ノートは自分で取っているのである程度は記憶にあるが、不足分や要所はシャルやノアの手助けを借り、残りはヤマを張って(このヤマ張りがどういう訳か百発百中なのだ)凌いでいた。
その甲斐あって(?)、試験の順位は毎回学年上位――学内掲示板に貼り出されるのは上位五十名まで――という、教員達にとっては手放しで喜べない事実が出来上がっていた。
「まっ、考えとくよ」
「『考えとく』とか『善処する』って、絶対そうしない人が言うんだよ?」
やはり気のない言葉に、イリスはジトッとした視線を送った。確かに、その気があるなら「そうする」とでも返すだろう。
痛いところを突かれたアレンは、乾いた笑いを零すことでこの場を誤魔化そうとする。
もっともそれで誤魔化されるイリスではないので、
「そういや、シャルは?」
話題転換の意味合いを強く込めて訊ねた。
幸い、それにはあっさりと応じてくれた。
「先生に用事があるから、先に行っててって。ご飯も食べてていいって言ってたよ」
「ふーん、なんの用事だろな」
「試験のことじゃない? 資格の」
「うへっ、中間試験の真っ最中にかよ」
魔導師、と広義に言っても、その種類は実に様々だ。
代表例としては魔導術師、魔導技師、魔導医師、魔導学師などがあり、その他にもあらゆる分野に携わる魔導師が存在する。しかし勿論、志を持つ誰もがなれる訳ではなく、現代の基準に則った実力を備えていなければならないのは、何も魔導師に限ったことではない。
その実力を明示するものが、各職業に沿った資格試験という訳だ。
「シャル、なんの試験受けるって?」
「うーんと、確か『第一級火属性魔法』と、『第二級魔導師型』、あと『第四級開拓魔導術師』だったかな?」
相変わらずの気のない声に、イリスは指折り数えて答えた。ちなみに正式には全ての末尾に『資格』と付く。閑話休題。
「三つも受けんのかよ!? ってか同時に受けれんのか?」
予想外の回答に、アレンは思わずイリスに顔を向けた。
驚嘆の眼差しを受けるイリスも、困ったように息を吐く。
「だよねぇ。『属性魔法』と『戦闘型』は筆記と実技だけだけど、『職業資格』って実地試験があるでしょ? 開拓魔導師のやつだとクエスト受けなきゃいけないし、来週から中間試験の実習もあるのにシャル大丈夫かな」
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