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そんな訳で、パーティーを組むかどうかはともかく、二人が再び難題に飛び込まされるのは確定事項となっていた。
ガックリと項垂れる二人に、ミリーは引き攣った笑顔を浮かべる。
「ま、まぁまぁ! ご飯でも食べて元気出しなよっ」
いつの間にか慰める側と慰められる側が入れ替わっていたが、暗い表情の二人が不憫過ぎて、ミリーは甘んじてその役を引き受けることにした。内心で「二人と違う組になりますよーにっ!」と合掌しながら。
そうこうしながら辿り着いたのは、学園内で最も飲食店が集まるエリアだ。
ステラとリオンは、アレン達と同じ授業の時は彼らと食事を摂るが、そうでない時は態々待ち合わせてまで場所を同じくはしない。彼らにも彼らの付き合いがあるし、それは二人も同じなのだから。
そういう訳で、今日の昼食の面子はこの三人。少し早足で来たので、幸いまだ席は空いている。
「おっ、やーっぱ早めに来て正解だったねぇ」
遠くを眺めるように手を翳したミリーの溌剌とした声は、それでも混雑ぎみの雑踏の中に埋もれそうだった。
「じゃあ席取っとくから、先に並んでて――」
効率良く役割を分担し、テーブルに荷物を置きにいこうとしたリオンが、急に言葉を切った。
「リオン君、どうかしたのですか?」
「いや、誰かなって……」
首を傾げたステラは、その視線を辿った。
見ると、店に並ぶ学生達も、一様にある一点へ視線を向けている。
その中心、多くの学生達の視線を一手に引き受けていたのは、褐色の髪を持った一人の青年だった。
五月も下旬に差し掛かる今日。四季があるこの大陸では春の陽気も徐々に熱を帯びてきているというのに、白を基調としたコートに身を包み、白い手袋までしている青年は、周囲の視線など意に介さず優雅にティーカップに口を付ける。その仕草の一つ一つが、育ちの良さを明確に知らしめていた。
「ありゃっ、誰かなあの人? なーんか貴族っぽいけど」
同じくその人物に気付いたミリーが手を翳したまま言ったが、実は彼女も貴族の末娘である。もっとも、ステラやシャルのような高位の貴族ではないのだが。
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