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「ところで、後ろの学生達は? まさかまた姉上の思い付きに振り回したのではないでしょうね」
「失敬ね、彼らには道案内を頼んだだけですっ」
そこでようやく、ステラは頬を膨らませたルナの背後で呆然としている二人に気付いた。
「アレン先輩、イリスさん……!」
「よぉ、ステラ……」
「えっと、何が何やら……」
やっと場が動くと、二人は苦笑いを返した。
「皆さん御紹介しますね。姉のルナと兄のマルスです」
立ち話も何だからと “ルナに”提案された一同は、傍にあったテーブルをくっつけて話を再開した(親切な一年生達が態々譲ってくれたので、なんだか申し訳なかったが)。
「ルナ=スィ=エル=ティエラと申します。自己紹介が遅れて申し訳ありません」
柔らかな笑顔とやんわりとした口調で話すルナとは違い、
「マルス=ルィ=エル=ティエラだ。妹がいつも世話になっている」
マルスはぶっきらぼう、或いは少し棘のある口調だった。表情にも笑顔など欠片も浮かんでいない。
それに不満を感じたのは、明らかな不機嫌さをぶつけられたアレン達ではなく、何故か対面に座るルナだった。
「マルス。可愛い妹が取られて不満なのはわかりますが、もっと言い方というものがあるでしょう?」
「言い方も何も、これが私の精一杯なのは姉上こそが良く御存知の筈です。それよりも前半の部分に甚だしく異論を唱えたいのですが」
「あらごめんなさい、『可愛い』ではなく『溺愛する』でしたね。私(わたくし)とした事がうっかりしていたわ」
「…………」
「うっかり」格上げされてしまったマルスは、これ以上さらに格上げされては堪らないとばかりに閉口した。
益々不機嫌そうな顔になった兄を見て、ステラは慌てて話題を変える。
「あ、あのお二人とも、今日は何故こちらにっ?」
「あらステラ、彼らの事は紹介してくれないのかしら?」
「あっ、えと、はい……!」
しかしその試みがあっさりと挫かれてしまい、余計慌ただしく頷いた。どうにも、彼女の姉のペースから抜け出せない。
気を取り直して、今度は姉達に紹介する。
「こちらがクラスメイトのリオン君とミリーさん、そちらが四年生のアレン先輩と、妹のイリスさんです」
ちなみに座席はそれぞれ、両端にルナとマルス、ステラの左右にリオンとミリー、その対面にアレンとイリスが腰を降ろしている。
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