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「リオン=ウィンジアです、初めまして」
「ミリアム=リーラ=ガーフィールドです。よろしければミリーって呼んでください」
余談だが、ミリーが「よろしければ」などと言ったことにリオンが意外感を覚えたのは、本人の胸の内にひっそりと留められた。
「アレン=レディアントです。こっちこそ、自己紹介が遅れてすみませんでした」
「イリス=レディアントです。よろしくお願いします」
いつも通りの口調で謝辞を返したアレンとは違い、イリスは少し畏まった風だった(彼女は普段、目上に対しても敬語は使わない)。ルナに対しては先程普段通りの口調で接していたので、恐らくマルスに対して人見知りが発動しているのだろう。
「…………」
ふと、アレンはルナの視線がこちらへ向いていることに気が付いた。近い側に座るイリスにではなく、アレンにだ。
そういえば会ったばかりの時も彼女は自分を注視していた気がすると、もう一度訊ねてみる。
「あの、何か……?」
「いいえ、何でもありません」
が、やはり返ってきた言葉は変わらなかった。ニコニコとした笑顔も、何でもないようには見えないのも。
「それで、私(わたくし)達が来た理由ですが……」
何事もなかったかのように、ルナは話を戻した。
「もちろん貴女に会う為よ、ステラ。可愛い妹の制服姿を見るだけでも、遠路遥々やってきた甲斐があるというものです」
「は、はぁ……」
惜しむことのない満面の笑みに、ステラは少し気圧されぎみな声を返した。
「姉上の冗談はさておき、我々がお前に会いに来たという点は事実だ」
「私は冗談など申しておりませんっ」
さらりと言われて、ルナは再び頬を膨らませた。
「では、どのような御用件で……?」
「この場で話すには些か以上にプライベートな用件だ。場所を移そうとも思ったのだが、聞く所に依ると今は中間試験の最中だそうだな?」
「はい。ですが本日の分は全て終えましたので……」
「午後の予定は?」
言い終える前に、言葉が被せられた。
一瞬、ステラの視線が隣に座るリオンにいく。
「五限目に、リオン君達と訓練室で実技の復習を行う予定です」
「では詳しくは後程話す。限られた環境下での練磨を疎かにする訳にはいくまい」
そう言うが早いか、マルスは椅子から立ち上がった。
「今晩、姉上と共に寮へ行く。それまでは気にせず、実技の復習に励むように」
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