236人が本棚に入れています
本棚に追加
取り残されたような感覚のまま、ステラは廊下の端の方に位置する自分の部屋へ向かって歩いていた。
リオンは、何を言いたかったのだろう。単純に姉達ときちんと話すよう促してくれただけなのだろうか。
いや、それにしては……。
そんなことを考えつつも、足は自分の部屋へと近付いていく。
刻一刻と、姉達に会う時間だけが背後に歩み寄っていた。
アレン達は大丈夫だと言ってくれたが、どうやっても、陰鬱な気分は晴れてはくれない。
(うぅ……)
胃がキリキリするのを感じながら、とうとう長い廊下の果てに辿り着いてしまった。
もう成るようにしか成らないか、という若干の諦めと共に、扉の鍵を開ける。
「?」
しかし、鍵が差し込んだ状態からそれ以上回らなかった。
不審に思ってノブを回すと、扉が開いた。
今朝出る時に鍵を掛け忘れただろうかと首を傾げながら、ステラは部屋に入る。
玄関に入ってすぐ、いつもと違う光景が目に入ってリビングに駆け出した。
まさかと思いながら、玄関とリビングを隔てる仕切り戸を勢い良く押し開く。
「む、帰ったか」
リビングのテーブルで紅茶を啜っているマルスが、そこにいた。
「……あの、マルス兄さ――」
「マルスー? 何か冷たい飲み物を――あらステラ、お帰りなさい。遅かったのね」
さらに、身体からホクホクと湯気を沸き立たせているルナが風呂場から現れた。
入り口に立ったまま硬直しているステラに、ルナがキョトンと小首を傾げる。
「どうかしたの?」
「………お二人とも、いついらっしゃったのですか?」
「それがね、うっかり"マルスが"時間を伝え忘れたものだから、二時間は前から待っていたの。寮の場所は聞いていたからすぐに着いたのだけれど、そうしたらマルスったら、今度は部屋の番号を聞き忘れてしまったって言うのよ? 信じられる? 仕方がないから偶々通り掛かった子に部屋の番号を訊ねたの」
「……鍵は、掛かっていましたよね?」
「えぇ。だからどうしようかと寮の入り口で途方に暮れていたら、丁度管理人の方がお見えになって、事情をお話しして鍵を開けて頂いたのよ。本当に、一時はどうなる事かと思ったわ」
全責任をマルスに押し付けながら困り果てたように頬に手を置いたルナは、やはり全くと言って良いほどそうは見えなかった。
最初のコメントを投稿しよう!