第二章 第二話:『銃爪と爪痕』

2/20
前へ
/760ページ
次へ
   上級学院の校舎数はとにかく多い。学生数はもとより、五つの学部とそれらに属する学科の数が尋常ではないからだ。少なくとも、学区のほぼ半分を占める敷地のそのさらに半分以上がそれらで埋め尽くされていると言っても過言とは言い切れないくらいには、数がある。  その数多ある校舎群は学部毎のエリアに区切られており、弧を描く敷地に沿う形で、南から芸術学部、技術学部、魔法学部、武術学部、医学部の順で、北へと続いている。医学部が最も北寄りなのは怪我人の排出度が高い闘技場が近いからであり(闘技場にも治療の為の設備や休憩室はあるが、大体は医学部に“患者”として搬送される)、それに武術学部と魔法学部が続いているのは闘技場の使用率が最も高いからだ。入学式などで生徒が一同に会する大講堂や学園長室もある『本棟』は魔法学部と技術学部の間で、研究院の校舎もここにあり、基礎学院は南西の校門に最も近い場所に位置している。  全ての学部には構造は違えど実習室と称される部屋が多数用意されており、生徒達は授業で学んだ専門的な技術をここで練磨する。  魔法学部と武術学部には、この他に訓練室と呼ばれるものがある。個人的な、或いは半集団的な技術を主とする二つの学部では、運動場ほどもある広い実習室よりもこちらの方が手軽に大勢訓練出来るのだ。  普段はこの時間が授業中ということもあってあまり人はいないが(授業のない生徒が使う時もあるが)、今日ばかりは実技試験当日ということで、訓練室のある広い廊下は大勢の学生達のざわめきで一杯だった。  無数にある訓練室の手前で列を作る生徒達。彼らは今、実技試験を受ける為に待機している最中だ。また、その傍を行く明暗截然たる顔付きをした生徒達は、ちょうど試験を終えたところなのだろう。
/760ページ

最初のコメントを投稿しよう!

236人が本棚に入れています
本棚に追加