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最初は驚いたのだろう。大きな瞳を納めた目が限界まで見開いた。そして、瞳に映った光景を脳が理解するのに時間が掛かったのか、また理解に至ったことで別の光景まで思い出してしまったのか、驚愕に満ちた幼い表情が、徐々に、明らかに、激情に染まっていった。
憎悪という名の、激情に。
まさかと、ディノは後ろを振り向く。
あったのは、知らない顔と、見知った顔だった。
知らない顔は二つ。一つは暗い緑の髪と眼をした男子のもの。もう一つはオレンジ髪に薄茶色の猫のような瞳の女子のもの。まだあどけなさの残ったそれらからするに、恐らくは同じ一年生だろう。
そしてデルフィナの見開いた目が、それ以外は本当に視界から消え失せているのではないかと思えるくらい凝視しているのは、残りの一つ、見知った少女の顔なのだと確信出来た。
いや、見知ったなんて程度のものではない。他の物が見えよう筈がない。その人物とディノが関わったが故に、ディノも、デルフィナも、そしてその人物自身も、狂った運命に引き摺り込まれたのだから。
ステラ=ユィ=エル=ティエラが、そこにいたのだから。
† † †
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