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「お前なんか、ディノと同じ目に遭わせてやるッ!! お前なんか――」
「ちょ、ちょおっとストーップ! ナニナニ、何なのいきなりっ?」
「フィーナ、やめるんだ!」
ディノと、突然のことに一瞬思考が停止していたミリーが二人の間に割って入った。
「でもッ――」
「いいから!」
「ッ!」
押さえ付けるように両肩を掴んだディノにデルフィナは食って掛かったが、逆に怒鳴るような声で遮られて大きく肩を震わせた。
怯えたような表情にハッとしたディノは、思わず昂ってしまった気持ちを落ち着けて、言葉を選ぶように少しだけ間を置く。
「……こんなとこで暴れたら罰則受けちゃうだろ? フィーナの気持ちは嬉しいけど、それでフィーナが叱られるのは嫌なんだよ」
「でも……」
「僕のことは大丈夫だから。だから、ね?」
「………うん」
滅多に怒鳴り付けるような声を出さないディノに怒鳴られたことがショックだったのか、デルフィナがシュンとした風に小さく頷くと、薙刀は葡萄色の光と共に虚しく消えていった。それに合わせて、ステラも武器を仕舞う。
「ステラ、だいじょぶ?」
「は、はい……」
心配げな顔をしているミリーには声だけを返しながら、ステラはその肩越しに見える背中から視線を外せない。
涅色の髪。ステラよりほんの少しばかり高い背丈。我を取り戻した聞き覚えのある声は、良く言えば優しい、悪く言えば気弱なもので、記憶に刻まれているものと寸分違わなかった。
少年が、振り返った。良く見知った渋紙色の瞳が、端から見れば穏やかな光を放つ。
「……やあ。久しぶり、ステラ」
「……お久し、ぶりです」
半年ぶり以上の再会なのに、二人の挨拶はあまりにぎこちない。ステラに至ってはディノの瞳を直視出来ていなかった。
「ステラ、この人たちは?」
「あっ、と、その……」
その様子には特に言及せずにリオンが訊ねたが、ステラは一層気拙そうに視線を泳がせるだけだった。
「驚かせてごめんなさい。僕はディノ。こっちがデルフィナ。ステラとは……基礎学校の時のクラスメイトなんです」
少し間の空いた言葉に、デルフィナの表情が不機嫌そうに曇った。
「ってことは同じ一年生か。あっ、アタシ、ミリアム。ミリーでいいよっ。こっちはリオン君」
それに気付かなかったミリーは、二人の名前を聞いた途端ディノの眉がピクリと反応したので、不思議そうな顔をする。
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