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「どうして、ですって?」
震える声で、デルフィナが訊き返した。
熱と冷気を同時に帯びた葡萄茶色の瞳が、ぞっとするような眼差しでステラを見る。
「……最近調子がいいらしいじゃない。聞いたわよ、新入生クエストの話。いいご身分ね。何も知らずにのうのうと、もう新しい生活に溶け込んでる」
「……フィーナ」
「でもね、どんなに『今』を取り繕ったって、お前の『罪』は決して消えない。お前がしたことを、わたしは絶対に赦さない」
「フィーナ!」
「だってディノッ!」
再び噛み付いたデルフィナに、ディノは小さく首を横に振った。
「……ッ!」
まだ何か言いたげだったが、デルフィナは下唇を噛み締めて納得いかないとばかりに顔を逸らした。その様子に、ミリーが困惑したように眉を寄せた。
「……どうしてって話、だったよね」
息を吐いて、先程の問いにディノが答える。
「別に、たいした理由なんかないよ。ただこうなるべくしてなった、ってだけで、誰が何を言ったってどうしようもないことなんだ。それに、これは僕自身が選んだ結果でもあるんだ。だから、君が気にするようなことじゃない。それが僕の答えだよ」
穏やかとは違う。どこか諦観したような、しかし別の何かを表情と言葉に秘めていた。
もう一度、何かに対して、ディノは首を振る。
「……もうこの話はやめよう。それより実習だけど、準備は各々で整えない? まだ実技が残ってるから集まるヒマもあんまりないし、フィーナもこんなだし」
「こんなって何よ。言っとくけど、わたしは端からディノと二人で準備するつもりだったんだから。何が悲しくて学園の外でまでコイツと会わなきゃいけないのよ」
ステラには視線を一切向けずに返したデルフィナに、ディノは「ほらね?」とばかりに肩を竦めてみせた。
「そっちの二人はどうかな。まぁ君たちにとっては訳のわからない状況だと思うけど……」
「うん、ぜんっぜんわけわかんないよ。どうする、リオン君?」
困惑した表情のまま、ミリーは投げやりぎみに訊ねた。
「僕は別に構わないよ、その方が円滑に進むなら。ステラは?」
「……大丈夫、です」
だってさ、といった風に、リオンの視線がディノへと移る。
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