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ディノだ。ディノが辛い想いをして、ディノが苦しいのを我慢して、ディノが嘘を吐いてまであいつを庇うのが、最も不愉快なのだ。不快なのだ。まるでゴミ溜めに顔を突っ込んだような感じがするのだ。
「ねぇ、もう一度先生に班替え頼みましょうよ。あんなのと一緒だなんてわたし……」
ディノが、という部分を省いた言葉に、当人はやはり、首を横に振る。
「もう一度言っても個人的な理由には変わりないよ。それに、やっぱりきちんと向き合わなきゃ」
そう言って、また歩き出した。
言葉は返さずに、デルフィナも追い掛ける。
「……ねぇ、フィーナ」
「?」
徐に掛けられた声に、首を傾げた。
少しの間、言葉を待つ。変わらず前を向いたままの口が何やら言い掛けては閉じる様を、背後から顎の動きだけで見て取る。
結局、何かを諦めたように小さく息を吐き出して、
「………ごめん」
「ッ……!」
何が、が省かれた謝罪をしてきたので、下唇を噛み締めた。
(ムカつくッ!!)
声には出さずに思い切り吐き出すことで、今すぐ来た道を駆け戻ってやりたい衝動をなんとか抑えることが出来た。
† † †
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