Prologue:『始まりの始まり』 1-1

8/10
前へ
/760ページ
次へ
 フェルナはまた新たに図を描いていくと、 「光は火と地、闇は風と水。それぞれの精霊達はその眷属との相性がすごく良いの。そしてこれは人にも言える事よ」  いつの間にか聞き入っている二人の顔を見た。 「同じ属性もそうだけど、この眷属の関係にある属性同士の人は自然と惹かれ易いの。必ずしもそうってわけでもないんだけど、その法則で一緒になる人達がほとんどってわけ。だから、貴族なんかはそれを重要視する家が多いのよ」  聞き終わって、アレンはふと疑問に思った。 「あれ、でもうちのお父さんとお母さんは光と闇で正反対だよ?これも例外ってこと?」  シャルも確かにと思った。眷属やら相性やらを考えると、光と闇は合わないのではないか。  しかしフェルナは微笑ましげに顔を綻ばせた。 「それはね、あんたんとこの親は本当にお似合いだったってことよ」 「どういうこと?」  どうにも要領を得ない答えに、シャルが訝(いぶか)しんだ。 「光と闇の精霊王っていうのはね、仲の良い夫婦なの。セフィーナ達は本当に仲が良かったから、まさしくお似合いだったってわけ。あんたが生まれてからも本当に幸せそうにしてたし、それは“今”も同じ。それに、眷属以外とは仲が悪いわけじゃなくて、ただ単に眷属同士の方が惹かれ易いってだけなの。火と水だって仲は良いのよ?」  それを聞いて、アレンはなんだか安心した。幼いなりに心のどこかでセフィーナが寂しい思いをしているのではないかと心配していたのだ。 「それから精霊の加護の事だけど、どれほど魔法を上手く扱えてもそれを自分一人の力だなんて思っちゃだめよ?これは私の師匠(せんせい)が仰ってた事なんだけど、『私達は、常に精霊達に見守られているの。この生命を授かった時から、再び大地に還ったその後まで。だから、どれ程小さな加護でもそれに感謝し、精霊達の言葉に耳を傾けなさい。そうすれば、自(おの)ずと彼らは私達に力を貸してくれるわ』ってね」 「……良くわかんないんだけど?」 「まあ、あんた達もいつかわかるようになるわ」  イマイチ良く解っていない二人に苦笑しつつ、フェルナはその頭に手を置く。 「以上で終わりっ。それにしても良かったわねぇ、シャル?」 「何が?」  不思議そうに首を傾けたシャルに、苦笑が意地の悪い笑みに変わった。
/760ページ

最初のコメントを投稿しよう!

236人が本棚に入れています
本棚に追加