瀬戸の小島

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「いやいや、美智子。俺達は、もう大人だ。それに、まだ日も高い。ちょっと覗くだけだ。それでもダメか?」 弘樹は、すぐさま説得に掛かった。 「……ちょっと覗くだけだからね」 「もちろんだ。入り口を覗くだけさ」 お得意の弘樹の作り笑いが出た。 「………わかった」 しぶしぶ美智子は、うなづいて、わたし達は、その岩場に向かったのだった。 波打ち際を歩く事、しばし、少しずつ岩が多くなり、歩くのが困難になってゆく。 砂浜から急に岩の丘みたいになっていた左側も、今や岩壁の様になっていた。 わたしは美智子の手を取りながら、慎重に進む。 先を行く弘樹達は、ぬるぬる滑る足場を気にする事無く、ひょいひょいと跳ぶように先に行く。 「ちょっと待ってよー!」 わたしは叫んだ。 その時に弘樹達の動きが、ぴたりと止まって返事があった。 「あったぞー!洞窟ー!」 その洞窟は、入り口が2メートルくらいだった。 3分の1が海水に浸かり、中は真っ暗で、所々に足場となる岩は、あったが進入するには若干、困難だと思われた。 「美智子、中はどうなってるんだ?」 弘樹は聞いた。 「広くなってるわ。奥は、かなり広かったと思う」 「そうか……ちょっとだけ中に入ってみよう」 「え?だけど……」 「大丈夫だよ、美智子。すぐに引き返す」 弘樹は、そう言って、ライターを灯し、するりと中に入って行った。 洋介、周平、美香も続いた。 「どうする、美智子?」 と、わたしは美智子の顔を見た。 美智子は、ため息をついて、行きましょう。と言った。 困難なのは、入り口だけだった。 入ってしまえば、中は足場になる岩が多かった。 今は干潮らしく、洞窟の両側に足場となるスペースがあった。 満ち潮なら、このスペースも海水に沈むのだろう。 弘樹達は、すでに十数メートル先に進んでいた。 「ちょっと待ってよ!」 わたしの呼ぶ声が、暗闇で反響して、かなり奥まで洞窟が続いている事がわかった。 「すまん、一旦止まる。遥、おまえもライターを点けろ」 弘樹の声が、洞窟の壁に何重にも、こだまして届いた。
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