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わたしは、ちらりと横の美智子を見た。彼女は少し目をつむり、深々とため息を吐き出した。
「しょうがないわね。付き合うわよ」
「遥は、どーすんだ?」 洋介の問いに、わたしも仕方なく頷いた。
「決まりだな」 弘樹は満足げに笑い、立ち上がって言った。
「そろそろ日も落ちてきた。帰るとするか」
その日は、ささやかな宴会となった。 昼間の丸いテーブルは片付けられ、代わりに長方形の長テーブルが用意されていた。
テーブルの上には、お刺身や煮魚、ちょっと知らない料理などが、ところ狭しと並べられている。 もちろん、お酒もあった。
「やったー!海の幸!」 と洋介は喜びの声を上げたが、わたし達は少しばかり恐縮してしまった。
「すみません、おじさま。こんなに……」 美智子は言ったのだが、おじさんは「ええんじゃ、ええんじゃ。たまの事じゃからな」 と言って、からからと笑った。
とりあえず皆で乾杯をした後、しばらくは飲んで食べて、思い思いに海の幸を堪能した。
それから、しばらく経つと、おじさんと弘樹は、もっぱらメガフロート『デュナス』や米軍の話、政治の話をしだした。
わたしと美智子は、そんな二人のお酌をしつつ話に聞き入った。
洋介は、波吉さんと明日の釣りの話に夢中になり、隣の周平は黙って静かに日本酒を飲みながらも、時折興味深げに話を聞いている。 洋介は、お酒に弱いので、あまりろれつが回っていない。時々、周平にもたれ掛かる。
美香はと言うと、お手伝いさんの初江さんと美保さんの片付けやらを、せっせと手伝っていた。まったく良くできた妹である。
「………そう言う訳で、わしは、あの『デュナス』が出来るところを毎日、双眼鏡で見とったわけじゃ」 おじさんも、あまりろれつが回っていなかった。
聞くところによると『デュナス』は、何十ものブロックをタグボートで牽引して、それを繋ぎあわせる形で建造されたようだ。
弘樹は、すでに知ってる様子だったが、いちいち頷いて、おじさんと話していた。
「おうおう、遥さん。飲んどるかいのう? わしらばかり話して、すまんなあ」 そう言って、おじさんは、わたしのコップにお酌をしてくれた。
「はい、いただいてますよ」 わたしは並々に注がれた日本酒を、ぐびぐびと飲んだ。
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