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「おお、こりゃ遥さん、ええ飲みっぷりじゃ」 おじさんは、上機嫌で笑った。
「おじさ~ん、ダメですよ。遥と弘樹はザルですからね~」 酔っぱらいの洋介が言うが、もう半分寝ている。 隣の波吉さんは、すでに畳の上で大の字だ。
「ははは、ええんじゃ、まだ酒は、ようけある」 そう言ってまた陽気に笑う。
「そう言ってたらキリ無いスよ、こいつら……!!」 突然、洋介は口を押さえトイレに駆け出した。
「言わんこっちゃないな」 周平が、ぼそりと言う。
「ほらほら、波吉さん。部屋に行って寝んさい。まったく、しょうがないのう」 大の字になった波吉さんを初江さんが揺り動かすが、波吉さんは気持ちよさそうに寝たまま動かない。
「俺が運びますよ。部屋はどこですか?」 周平は、ひょいと波吉さんを抱え上げた。
初江さんは少しびっくりした様子だったが、すみませんねえ。と言い、周平を連れて行った。
「……あの周平君とやらも酒に強いのう」 と、おじさんは言う。
「旦那さん、お風呂の準備が出来ましたよ」 美保さんが、おじさんに声を掛けた。
「そうか、そうか。悪いんじゃが、美保ちゃん。わしは、今日は飲みすぎたけえ、もう寝るわ。お客さんを風呂に頼む」 おじさんは、そう言うとフラフラと立ち上がった。
わたしと弘樹は、とっさに立ち上がって、おじさんを支えた。
「おっとっと……すまん、すまん……」
「美保さん、部屋はどこですか? 俺が運びます」
美保さんは、こっちです。と言い、弘樹を案内した。
弘樹もまた、おじさんを抱え上げ、奥に消えた。
わたしと美智子は、同時に座り込み、同時に深いため息をついた。 それから顔を見合わせ笑う。
「さあて、片付るかあ」 美智子が腕まくりをしたが、わたしは、ちょっと待って。と残ったお酒を飲み干した。
美智子は、ほんとにザルね。と苦笑したのだった。
それから、女性陣で片付けを終える間、弘樹と周平は、交代でお風呂に入った。
わたし達が、部屋に戻った時、周平がお風呂から上がったところだった。
「おう、お疲れ」 縁側に座り煙草を吸っていた弘樹が、疲れたわたし達を見て声を掛ける。
二間と縁側は、開け放たれ、海からの風が斜面をかけ登り、心地よい。
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