瀬戸の小島

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「風呂入れよ。広くて綺麗な、ひのき風呂だったぞ」 弘樹は言いながら、かたわらの缶ビールを飲む。 洋介は布団の上で大いびきで寝ている。 本好きの周平は、その横の布団に寝転がり、読書をはじめた。 「一緒に入ろうか、美香ちゃん」 美智子が声を掛けると、美香は嬉しそうに、はい。と答えた。 美香はほんとに美智子に、なついている。 わたしをほったらかして、よく二人で買い物や映画にも行っている。 一人っ子の美智子は、美香を妹の様に可愛がっていたし、美香も実の姉の様に慕っている。 「俺も一緒に入ろうか?」 弘樹が爽やかな笑顔で言ったが、即座に美香が、いいです。と、きっぱり断った。 「瞬殺?!」 弘樹は、がっくり肩を落とした。 「当たり前でしょう」 わたしは笑いながら、弘樹の隣に腰をおろし、煙草に火を点けた。 「ねえ、明日の買い物、わたしも一緒に行っていい?」 弘樹は、さっき、おじさんにどこか買い物が出来る場所はないか聞いていた。 島の反対側の集落に、商店があると聞くのと同時に、おじさんに軽トラックを貸してもらえるようになったのだ。 「ああ、いいよ」 「花火、売ってるかな? 夏っぽくていいでしょ」 「どうだろうな。あるといいな」 「うん」 斜面をかけのぼる海の香りを含んだ涼しい風が、わたし達を撫でていく。わたしと弘樹は、しばし縁側で、二匹の蛍になった。 そのあと、美香と美智子が、お風呂から出たので、入れ替わりに、わたしが入った。 お風呂は、ほんとに綺麗で広く、ひのきの良い香りが広がっていた。 極楽だぁと思いながら、ゆったりと、ひのき風呂を満喫した。これなら3人で入っても大丈夫だと思いながら、ひとりで、お湯に浸かる。 わたしが、タオルで頭を拭いながら部屋に戻ると、弘樹はまだ縁側にいた。 かたわらの缶ビールは3本目になっていた。 「よう、最高の風呂だったろ?」 そう言って弘樹は、冷えた缶ビールをわたしに勧めた。 「来て良かったね」 わたしは缶ビールを受け取りながら、答えた。 そうだな。弘樹は無邪気な笑顔を向けた。 洋介は、静かな寝息を立て、周平は読書を続けている。 美香と美智子は奥の部屋で、トランプをしていた。
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