瀬戸の小島

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翌日、洋介の声で目が覚めた。 枕元の携帯で時間を見ると、6時半。 ふすまで閉じられた向こう側で、洋介が釣りだー!釣りだー!と騒いでる。 ……ムカついてきた……。 わたしは、ふすまを少し開け、洋介うるさい!と怒鳴った。 すると洋介は、「おっ、遥、起きたか? 釣り行くぞ、釣り」 と嬉しそうに笑った。 その近くから、弘樹が、何とかしてくれ。と、恨みがましそうに、うめいた。 朝食を終えたわたし達は、別行動をとる事になった。 周平と洋介は、波吉さんのナビゲートで釣り。 美香と美智子は、昨日行った浜辺に散歩して、それから周平達の元に、お弁当を運ぶと言う。 わたしと弘樹は、おじさんに借りた軽トラックで、島の反対側の集落に行き、買い物。 「期待してろよな!」 洋介は、そう言い放つと、周平と波吉さんと意気揚々と、坂道を降りて行った。 「美智子達は散歩でしょ?」 「周平達のお弁当の下ごしらえをしてからね。遥達は、いつ頃帰ってくるの?」 「ちょっと、わかんないけど、お昼頃だと思う。帰ったら、すぐに釣り場に行くよ」 「わかった。気をつけてね」 そんなやり取りをして、わたしと弘樹は、軽トラックに乗り込み、島の反対側に向かった。 運転は、弘樹だ。 小高い山の様な宇賀島は、反対側に行くには、海岸線の道路をぐるりと廻って行くしかないらしい。 一応舗装はされているが、あまりきちんと整備されてない道路は、凸凹だ。 それでも、右を見たら美しい海岸線。 左を見たら、畑に立ち並ぶ、まるで自然の柵の様なヒマワリが、ずっと続いていて、見ているだけでも楽しくなる。 がたごとと車に揺られながら、全開にした窓から入ってくる夏の匂いに、気分は、すがすがしいものだった。 弘樹も、煙草を吸いながら、低い堤防の向こう側の海を時折見ながら、気分良さげにドライブを続けた。 島の反対側には、30分足らずで着いた。 道路の凸凹が急に無くなり、コンクリートの舗装になった。 目の前には、小さな、だけどコンクリートで整備された船着き場が広がった。 船は、あまり無く、人影もまばらだ。 所々に簡素な小屋が点在し、左手の山の斜面には、比較的、今風の住宅がいくつか見てとれた。
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