瀬戸の小島

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「うん、だって、三千人がいるんでしょ?」 「五千人だ」と、弘樹はすぐに否定した。 大学を卒業したら、防衛省に進む、弘樹には、メガフロート『デュナス』は、とても興味のある物なのだろう。 もしかしたら、弘樹自身が、あのデュナスに赴任するかもしれないのだ。 日本国内は大きく変わった。 つまり、政局は大きく変わった。 国外の情勢と共に、自分たちの国は自分たちで守ろうと言う機運が高まり、自衛隊は『日防軍』に変わった。 これは、国内外に大きな波紋を呼んだ。 国内では、何ヵ月にも及ぶ国会での審議が行われ、国外では、またあの第二次世界大戦の時の日本が蘇るのでないか。との懸念の報道が連日続いたが、結局、現体制の内閣が押しきり、『日防軍』が誕生した。 同時に、日本国内での銃刀法規制の緩和案が、半ば、ごり押しされ、可決してしまった。 18歳以上であり、厳しい適性テストと、筆記試験に合格すれば、銃刀を所持する事が許されたのだ。 これにより、また国内外でも大きな波紋を呼んだ。 しかし、瞬く間に国内には銃砲店が拡がり、それによる犯罪も比例して広がった。 また、その事で緊張状態であった、朝鮮半島の国とも、さらなる緊張状態に陥ってしまった。 「我が国に対する挑戦である」らしい。 もちろん、その間にも、その国からミサイルが数発飛んで来て、あわやと言う事があったので、現内閣の判断は正しいとする国民の判断からか、現体制は続いている。 もちろん、国外からの批判は続いていたが、一学生である、わたし達には、あまり関係の無い事だった。 しかし、わたしと弘樹は少し違った。 法律改定により、防衛大学と警察大学に進む学生は、銃砲刀の所持免許試験を受ける事が出来るようになったのだ。 そんな訳で、わたしと弘樹は厳しい難関を突破して、銃砲刀の所持免許を取得した。 お互い何も言わないが、多分、わたしと同じで弘樹は銃刀を所持しているだろう。 特に弘樹は、その感が強い男だった。 目を細め、かなたの水平線を見る弘樹の横顔を、わたしは見つめた。 「ん?何だ?」 弘樹は、ふいに振り向き尋ねた。 「別に…」 わたしは、被っていたキャップを被り直すふりをした。
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