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◇目を開けると、そこは何もない場所だった。
ここは、どこだろう?
オレは、確か自分の部屋で寝ていたはず…
あぁ。そうか、これは、夢なのか。
それにしても、何もない。
辺りを見回しても、真っ白だ。
霧でもかかっているのか…?
とにかく、訳がわからない。こんなとこから、早く脱け出さねば。
どれだけ歩いただろう…。どこまで行っても、真っ白だった。
オレが、 疲れ果てて座り込みたくなったとき、ぼんやりとした人影が見えてきた。
それは、だんだん近づいてくる。そいつがはっきり見えたとき、その少年は、俺を見てとめて、立ち止まった。
見事な金糸の髪に、すんだエメラルドグリーンの瞳が美しい。
肌は色白で、歳は俺と同じか、1つ下辺りだろう。
そして、彼の目に明らかに驚愕の色がやどっているのを俺は認めた。
「どうしてお前がここにいる!」
金髪の少年が詰め寄ってきた。
さて、俺は、こいつとどこかで会ったことがあるだろうか、いや、ないはずだ。
なのに、相手は俺を見知っているかのようだ。
どうしてここにいるのかと、再び問われて、俺は我に返った。
少年の手に白っぽい光の球がやどっていた。
だが、それは見なかったことにし、「わからない」とだけ答えた。
少年は、そうかと頷き、俺に向かってこう言った。
「お前は今この世界にいては、ならない。よって、元の世界に送還する。世渡英士。お前は、この世…いの……――だ。」
一瞬目の前が真っ暗になった。
いっぱい聞きたいことがあったが、そんな余裕はなかった。
腹の辺りが少しばかり熱い。
きっと、光の球のせいだろう。
その後の記憶は、全くない。
ただ、落ちていくような、引っ張られるような、不思議な感覚に襲われただけだった…。
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