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「おはよう、英士君。」
俺は、おはようとかえしながら、練司をまじまじと見つめた。
こいつは、黒が好きなのか?
ブレザーの制服以外真っ黒だ。
ふさふさの黒髪、可能性に満ち溢れた黒目。黒ぶち眼鏡に、黒いコート、黒いかばん、黒い靴…
…ん?コート!!?
「お前、まだそのコート着てんのか!?世間はもう春だぜ?」
物珍しそうに、じろじろと見てくる俺に、練司は少し不貞腐れて、「良いじゃないか」と言った。
そして、だって…と言いながら、始終迷っていたが、気恥ずかしそうに、コートの中を広げて見せた。
片方には、ヤンキー、不良方御用達の立派な虎の刺繍…。(それって学ランじゃね!?)
そして、もう片方はというと…
ただいま大ブレイク中、人気アイドル愛嶋りんか(通称あいリン)の可愛らしいサインが…。
「だって、あいリンのサイン欲しかったんだもん…。」
と、練司が頬を赤らめて、頭をカリカリとかきながら言った。
知らない方が幸せだった事を知ってしまった15歳の春。
そう、春なのだ。
この日が、俺の運命が大きく変わる、一週間前の朝だなんて、俺は知る理由もなかった。
まさか、あの些細な夢が後で大きな意味を持つなんて…。
2016年03月17日
世界が変わるまで、あと7日。
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