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「───魔術」
アキの表情がおのずと暗くなる。その真意を察したのか、ミサキも顔を落とす。
彼らにとって忌むべき敵、斃すべき対象。それが魔術。
今から四年前の平成19年。世界同時多発テロが発生し、全世界の人間を恐怖に陥れた。日本もその例外では無く、国会議事堂及び官庁街周辺ビルの爆破と言う形で多数の犠牲者を出していた。
そのテロにより東京の首都機能は壊滅。停止に追い込まれる事になり、国家中枢機能を今アキたちが居るこの場所、副首都と制定されていた大阪府に移すまでになってしまった。
そこで犯行声明を出したのが「MERLIN」と名乗るテロリスト集団。あろうことか彼らは自らを「魔術師」と名乗り、地球自体の復興を目指す為、全世界に宣戦布告して来たのであった。
伝説上の魔法使いの名を冠すテロリスト集団。あろうことか彼らは本当に「魔術」を行使し、真正面から軍隊に抵抗。これを殲滅してしまうのだった。
そして始まる『MERLIN』対連合軍の全面戦争。現在戦況は泥沼化。前線では膠着状態が続いており、殺し合いが未だに続いている。
「ごっごめん。嫌な気分にさせちゃったかな……」
全ての元凶である魔術。それを目の当たりにして、嫌悪感を出すのは、連合軍訓練生としては至極普通の事であった。既に構造を解析され、こちらの軍でも利用されているにも関わらず、未だ敵意は拭えない。ミサキもそれを理解している故に、アキを不快にさせてしまったのでは無いかと不安に思う。
「……いいや、そんな事無いよ。ありがとう。痛みも引いたし、これで何の気も無しに外に出られるよ」
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