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「───我ら」
「必ずや」
「「────魔導を斃さん」」
互いに目を合わせ唱和する。意識せずとも口から零れ出るフレーズ。ここに入学して以来、習慣として既に体に染みついた言葉。連合軍最高司令官が開戦前夜の演説で放った数個の物言いが、今や彼らの心に脈々とした戦意として宿っていた。
「わたし……。頑張るから。ママやパパの敵を取るまで、頑張るから。アキくんも、ね」
彼女の両親は先の空爆時、ここ大阪で死亡していた。当時中学生だった彼女は一瞬にして家族全員を失い、絶望の淵に立たされた。そこから生まれた憎悪が、彼女の兵士養成学校入学に繋がる事は何ら不思議な事では無い。むしろそう言った「仇討ち」を理由に志願する人間の方が多いくらいだ。
ミサキは涙を瞳一杯に浮かべ、窓から空を見つめた。皮肉にも今日は満月。気でも狂いそうな程白い光が部屋に差し込む。
───俺は、一体。
先の剣戟を思い返す。圧倒的な強さ。身体的な差は確かに存在したものの、剣技では劣っては居なかったはず。それなのに負けた。敗者の烙印に身を沈めてしまった。
意図せずして拳に力が入る。爪が掌に食い込み鋭い痛みを発しているが、アキはそれを自らへの戒めとして捉える。
敗北の悔しさ───いや、違った。
負けるとか勝てないとかそういった些細な感情では無い。根源的な苛立ち。「奴ら」の心臓に刃を穿つまで、未だ遠いと言う焦燥感。
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