11人が本棚に入れています
本棚に追加
───動いた……!
網膜が極僅かな動きを捕捉、目の前の男が放った瞬速の刃を感応する。
反射神経が追いつくか否やの刹那的時間。自分の剣を胸に引き寄せ、重厚な鋼の一撃を受け止める。
刃から持ち手まで、手が千切れそうな程の鈍い振動が伝わり、剣を手離しそうになるが、刃を食いしばってそれを阻止する。
相手はこのまま鍔競り合いに持ち込もうとする───が、そうはさせない。
そのまま剣を反動のまま背面へテイクバック。全身全霊の力で、剣を振り上げたままがら空きの胴体に斬り込む───
「ごふっ」
が、体に伝わるは攻撃が通った感覚では無く、腹部に感じる猛烈な重圧と、胃からリバースして込み上げる酸味の効いた味だった。
吐き出さないよう口をすぼみながら鈍痛が響く腹部を見降ろす。見ると相手の大根の様に太い足から伸びた爪先が、自分の下腹部にブスリと突き刺さっていた。
意識が遠のく。このままではいけない。もう一度反撃しなければいけないと分かっているにも関わらず、視界に霞が掛かる。
「ちく……しょう……」
意識を失う前にに感じたのは、床に落とされ、その衝撃で額に痛みが走った感覚だった。
最初のコメントを投稿しよう!