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「………………きろ」
「……ぃ……クラ、きろ……」
何かが聞こえた。
「おい起きろこのボンクラ!」
顔面にバケツいっぱいの氷水をかけられて、アキ・アサクラの意識は覚醒した。
「何腹蹴られたぐらいで落ちてやがる。連合軍訓練生ならもっとハングリーさを見せろ!このクソ落ちこぼれ野郎が!」
「……はい教官」
「サーを付けろこのクソッ垂れ!」
「……サー、了解であります。サー」
「貴様はDだ。判定を貰えただけ喜べ。その反面グレッグ。流石は模範生だ。剣技、精神、戦略判断。どれをとっても素晴らしい。今回の実戦形式の訓練ではAをやろう」
「サー!歓喜の極みであります!サー!」
グレッグと呼ばれた実にゴツい男が、満面の笑みで誇らしげに返礼する。
「うーむ、良い返事だ!お前らも見ただろう!グレッグとアサクラの格の違いを。今回の訓練生全員が行った実戦形式の中で、最も無様な試合と最も美しい試合を観れた。ヒヨッこ共も各自参考にするように!ではこれにて解散!」
『サー!イエス、サー!』
全員が一斉に教官に敬礼を返すと、訓練生達は各自で何処かに散らばっていった。
アキは痛む鼻先と額を手でかばいながら、自分の寮の部屋に帰ろうとする。
「おい、アキ!」
声が聞こえたと共に肩を叩かれ振り向くと、そこにはショウ・ナカムラがブルーな気分なアキとは違い、快活な笑顔で立っていた。
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