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せめて、ジャケットくらい───が、上着を引っ掴んだ瞬間に、彼女は既にドアを開け凍結していた。当然、上半身裸のアキの体を目の当たりにしながら。
「えっと、エヘヘヘヘ……」
もう苦笑するしかない。急いでジャケットを羽織るが焼け石に水。ミサキ・アヤサトの顔は一気に紅潮していった。
部屋内に尋常じゃ無く気まずい空気が流れる。
アキもミサキもお互いに顔を赤くして顔を背けたまま全くの無言。言葉を話すのも恥ずかしいと言う具合だった。
沈黙。
…
……
……………
「「あのさ」」
…………
「「───────!」」
「「どっどうぞそっちから!」」
口を開くタイミングが奇妙に合致してしまい、更に気恥ずかしさが増す。更に互いに譲り合うものだから、これはもう堪らない。
「い、良いよ……アヤサトさんからで」
「う、うん。じゃあわたしからね」
話の順番を譲られ、ミサキは深呼吸して話し始める。
「明日の訓練予定は変更。 翌日0500(マルゴマルマル)より、二号館オーディオルームにて記録映像を視聴する事になります。間違えの無い様にとの伝令であります」
若干形式ばったもの言いでミサキは連絡事項を告げる。
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