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全くもってアキは忘れていたがミサキは入学当初に決められた伝令係だった。各生徒に訓練内容の変更や、行事などの重要な事項を伝達する役割で、各科各学年に一人ずつ振り分けられている。
「んじゃあ、アサクラくん、どうぞ……」
奥ゆかしいと言うか、なんと言うか。気恥ずかしさを感じながらも、アキは思った事を口にする。
「え、ええと、……今度からは、ノックした後ちょっと間を置いて………ね」
言葉を濁すが、言わんとする事は彼女に伝わった様で、元々紅潮していた顔をさらにヒートさせ、それはもう物凄い勢いで謝って来た。
「ごごごごめんなさい!別にアサクラくんの裸が見たいだとかああもうわたしったら何をああほんとにごめんなさ……」
「分かった分かったからもう良いって!」
入学当初から彼女はこの様なそそっかしい部分や、天然とでも言うのだろうか。何処か放っておけない、小動物を思わせる性格を持っていた。
訓練でもその性格は当然表れ、入学当初はアキとは別の科でしょっちゅう怒鳴られていたのを覚えている。
しかし今はその環境に慣れ、衛生兵としての才能を評価され始めているらしい。教官にもその天然性格に言及させない程と言うのだから、人は見かけによらない。
「……?そのコブ……」
「……バレたか」
先の実戦形式での無残な敗北は間違いなく彼女も目にしているはずだ。気分が沈むように萎縮していき、あわよくば穴があれば入りたい。
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