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―― もう外は暗くなりはじめていた。
「夜」という紺色の闇が のみこんでいくかのように…美しい茜色の空をほんの少しだけ残し、綺麗な半月がポツンと浮かんでいた。
大手芸能事務所「wave(ウェーブ)」の大会議室。
東京タワーも一望できる窓から、一人の男が窓の前に しゃんと立ち、ずっとその空を眺めていた。
名は「九条道長」。
見た目は二十代後半…黒のスーツをビシッと着こなし、体はピクリとも動かず、ただどこか冷めた瞳に月を映していた。
どれくらい そうしていただろうか…
「とても良い案だ。」
九条のものではないその太い声が 九条と、そして声の主しか居ない室内に響き渡った。
九条は窓に映っている自分を見つめ…少し柔らかい表情をつくってから振り返り、自分の企画書を それはもうゆっくりと読んでくれた社長のもとへと歩く。
キレイな黒革のくつが絨毯の上で低い音を奏でてゆく―。
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