第1章

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「春山、くんっ。」 本から顔を上げると、隣のクラスの女子が立っていた。 1年の時、同じクラスだった…桐生カオリ。 休み時間、いつものように読みかけの本を読んでいた俺は、中断されたことに何となく苛立って、本に視線を戻した。 「何。…今、本読んでるんだけど。」 「あ…ごめんね、邪魔して。」 桐生カオリは、本当に申し訳ないと思っているようだった。 少し、良心が痛む。 「えっと…。また、後で来るね。」 「いや…いいよ。」 俺は、しおりをはさんで、本を閉じた。 「ごめん。…ちょっと、八つ当たりした。…何の用?」 桐生は、嬉しそうに笑顔を見せた。 「あのね。…今日、元1-Bのみんなでカラオケ行くんだけど…。 春山くんも誘いたいって話になってて。…どうかな。」 …カラオケ…。 全く、行く気はしなかった。 どうやって断ろうかを考えていたその時、笹森美羽が教室に入って来る姿が目に留まった。 「…他に、誰か来るの?」 「うん、庄司くんでしょ、麻紀でしょ…。」 桐生は8人ほどの名前を上げ、最後に、 「あと、美羽も。」 と締めくくった。 「…一時間くらいなら、行けるかな。」 桐生カオリの顔が輝く。 待ち合わせ場所の説明を受けながら、俺は自分自身の答えに驚いていた。 .
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