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「春山、くんっ。」
本から顔を上げると、隣のクラスの女子が立っていた。
1年の時、同じクラスだった…桐生カオリ。
休み時間、いつものように読みかけの本を読んでいた俺は、中断されたことに何となく苛立って、本に視線を戻した。
「何。…今、本読んでるんだけど。」
「あ…ごめんね、邪魔して。」
桐生カオリは、本当に申し訳ないと思っているようだった。
少し、良心が痛む。
「えっと…。また、後で来るね。」
「いや…いいよ。」
俺は、しおりをはさんで、本を閉じた。
「ごめん。…ちょっと、八つ当たりした。…何の用?」
桐生は、嬉しそうに笑顔を見せた。
「あのね。…今日、元1-Bのみんなでカラオケ行くんだけど…。
春山くんも誘いたいって話になってて。…どうかな。」
…カラオケ…。
全く、行く気はしなかった。
どうやって断ろうかを考えていたその時、笹森美羽が教室に入って来る姿が目に留まった。
「…他に、誰か来るの?」
「うん、庄司くんでしょ、麻紀でしょ…。」
桐生は8人ほどの名前を上げ、最後に、
「あと、美羽も。」
と締めくくった。
「…一時間くらいなら、行けるかな。」
桐生カオリの顔が輝く。
待ち合わせ場所の説明を受けながら、俺は自分自身の答えに驚いていた。
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