第1章

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漏れ聞こえてくる大音量を背に、俺はカラオケ店の待合席に座ってカップのコーヒーを飲んでいた。 …なんで来たんだ、俺。 みんなの楽しい空気を壊したくなかったので、途中でそっと抜けてきたけれど…。 カラオケどころではない。 ボックスの中でも、つい笹森に目が行ってしまう。 気がつくと、楽しそうにはしゃぐ彼女を見つめているのだった。 …どうかしてる、と思った。 空になった紙コップを潰す。 狙いを定めてシュッと投げると、パコ、という音を立ててゴミ箱に落ちて行った。 そろそろ戻らないと、さすがに感じが悪いかもしれない。 もう一度、ここに来た事を深く後悔し、部屋に戻ろうと立ちあがった。 振り返ると、目の前に桐生カオリが立っていた。 「…びっくりした。」 「…ごめん。」 桐生は、にっこりと笑った。 「ちょっとさ、…話、あるんだ。…今、いい?」 上目づかいに微笑む。 「…何?」 「ちょっと…こっち、来て。」 桐生が、俺の手を取った。 手を引かれるまま、廊下を進む。 桐生は、一番奥の空き部屋にまっすぐ入って行った。 扉を閉め、こちらに向きなおる。 .
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