第1章

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「なるほどね。」 俺は、ゆっくりと体を離した。 驚いて目を見開く桐生の顔を見下ろす。 「春山くん…?」 俺は、桐生の胸を持ち上げながら、乱暴にぎゅっと握った。 「あ…。」 桐生が顔を歪める。 「悪くないね、セフレ。 …でも、俺、お前のこと、絶対好きにならないよ。 …ほんとにそれでもいいの。」 桐生は、はっとして…唇をかみしめて、俺の目を見た。 「……そういう、自分の価値を下げるような事、言わない方がいいと思うよ。 …本気で好きになれるやつ、探したほうがいい。 …もったいないよ。」 俺は、手を離して部屋を出ようとした。 「……美羽なら、だめだよ。」 笹森の名前を出されて、俺は思わず立ち止った。 振り返ると、桐生が射る様な目で見つめている。 「…なに言ってんの。」 「美羽のこと、ずっと見てたじゃない。…好きなんでしょ。 …今日だって、美羽がいるから、ここに来たんじゃない。」 …好き? 「違うよ。」 「違わない。…春山くんは、美羽のこと好きなのよ。」 桐生は、涙を溜めた目で俺を睨みつける。 「美羽は、無理だよ。…春山くん、知らないんでしょ。」 桐生の目から、滴が落ちた。 「美羽は、…ヘンタイ、だから。」 「……え。」 俺は思わず、聞き返した。 「あの子は、普通の人じゃ、無理なのよ。…残念でした。」 桐生が、部屋を出て行こうとする。 俺は慌てて、その腕を掴んだ。 「待てって。…それ、どういう意味……。」 「庄司くんに聞いたら?」 桐生は吐き捨てるように言った。 「美羽は、1年の時から、庄司くんのオモチャだったから。」 .
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