第2章

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笹森は、混み合い、熱気のこもったバスの中でも、涼しげに立っていた。 窓の外を眺め、静かに吊革につかまっている。 俺は、少し離れた場所に立ち、人ごみの隙間から、彼女の横顔を見つめていた。 『美羽は、ヘンタイ、だから。』 桐生の言葉が、頭をかすめる。 …ヘンタイ、って…。 凛と立つ彼女には、最も縁遠い言葉に思えた。 バスの中を見回す。 髪を長く伸ばした庄司が、バスの一番奥に立っているのが見えた。 女の肩に手を回し、耳もとで何か囁いては、くすくすと笑い合っている。 女の方は見かけない顔だった。きっと、2人で過ごした、朝帰りなのだろう。 『美羽は、1年の時から、庄司くんのオモチャだったから。』 ……どういう意味なんだろう。 2人が付き合っているという話は、今まで一切、耳に入って来たことがない。 隠していた、とは思えない。 庄司は、女が出来るたびに、堂々と周りに彼女の話を披露するタイプだ。 それは、二股のときも三股の時でも変わらない。 桐生が嘘を言っているとも思えないし…。 笹森に視線を戻し、彼女の異変に気付いた。 .
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