第2章

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「……?」 笹森は、頬を染め、俯いていた。 さっきまでとは、明らかに様子が違っている。 唇をかみしめ…何かに耐えるように、じっと目を閉じている。 彼女の後ろに付いた、若いサラリーマンが、もぞもぞと手を動かしているのが目に飛び込んできた。 ……痴漢…。 思わず足を踏み出そうとする。 強引に乗客の間をすり抜け、2、3歩進んだ。 誰かが、迷惑そうに舌打ちをする。 そして…俺の動きが、止まった。 ……笹森…? 唐突に、俺は気付いた。 痴漢は、彼女の胸を撫で回しながら、表情を覗きこんでいる。 その、表情が…。 ……頬を染めた彼女は、耐えているのではない。 …彼女は……。 嫌がっているどころか、まるで…。 「おい、おっさん!!」 突然、大きな声が、バスの車内に響いた。 庄司が、痴漢の腕をねじ上げて、睨みつけている。 「運転手さーん、痴漢捕まえたんで、停めてもらえますーーー?」 庄司は得意げに、運転席に声をかけた。 サラリーマンは、真っ青になってしきりに何かを呟いている。 違うんです、僕は…。ただ、偶然手が当たって…。 必死に言葉を並べるが、周りの目は冷ややかだった。 笹森は、じっと俯いて、吊革に掴まっていた。 結んだ髪の間から、赤く染まったうなじが見えた。 .
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