第2章

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「和にぃは?」 着替えてリビングに戻り、和真の姿が無い事に気付いた。 「デート、なんだって。…それなら、彼女も連れて来いって言ったのに、ヤダって。」 母は口をとがらせている。 「本命の彼女じゃないから、家に上げるのはだめなんですって。…まったく…。 本命じゃない彼女なんて、その時点でおかしくない?」 「…そうだね。」 俺は、笑いながら言った。 「和にぃらしくて、いいんじゃん?」 「…もう…。誰に似たんだか。」 母は、ぷりぷりしながら鍋をかき混ぜている。 俺は、食器棚から茶碗を取り出しながら、父の事を思い浮かべた。 和真の軽さが、オヤジの遺伝子でないことは、確かだ。 父は、厳しい人だった。 不器用で、力強くて、頑固な古いタイプの教師。 草野球チームの小学生相手に野球を教える時でさえ、手加減することはなかった。 眉間にしわを寄せ、いつも不機嫌そうに口を結んでいる。 遺影の写真、そのものの人。 だから…俺は、その写真を見るたび、いつも後ろめたくなる。 俺は、父の望んだとおりに、生きていない。 「今夜は…。」 俺は、ぽつりと言った。 「母さんも、デートなんじゃない?」 .
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