第2章

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店の裏手に回り込み、駐輪場の陰に入る。 「……何、してんの。」 笹森は、黙って俯いていた。涙が、ぽとりと落ちる。 「…アレを使うのは…まあ、…いいとしても。 …万引きは、ちょっとね。」 もう一粒、ぽとりと落ちる。 「…ごめんなさい…。」 小さく詫びる彼女を、俺は黙って見つめた。 「…恥ずかしくて…。レジに、行くのが。」 「…。まあ、そうだろうね。……普通、こういうものは男の方が準備するもんだよ。」 「……。」 自転車で通りがかった小学生が、チラチラとこちらを見て、通り過ぎて行った。 「…庄司に、言われたの?…買って来いって。」 笹森が、大きな目をさらに見開いて、顔を上げた。 「…あたり?」 「……知ってるんだ、春山くん。」 笹森は、悲しげな目で俺を見ていた。 「…庄司に言っとけよ。…こんなもん、女の子に買わせるなって。」 「…違うの。」 笹森は、穏やかに言った。 「あれは、庄司くんが彼女と使うための物、なの…。」 「…?」 「わたしと庄司くんは、…そういう関係じゃないから…。 ただ、私は、命令された事をしただけ…。」 .
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