第31章

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********** パチ、という音がして、私はぼんやりと目を覚ました。 点滅しながら、蛍光灯の光が辺りを照らす。 「…笹森?」 名前を呼ばれて、私の意識が一気に覚醒する。 顔を上げると、そこは教室だった。 入口に立って、驚いたようにこちらを見つめている姿。 「あ…。春山くん…。」 その名前を口にしてから、心臓が静かに速度を上げて行く。 「どうしたの。…寝ちゃった?」 笑顔を浮かべて、春山くんは窓際の席に歩いて行った。 私の鼓動は、極限にまで上がっていた。 …はじめて、話しかけてくれた…。 私はペンを握って、背筋を伸ばした。 居眠りしていた所を見られた恥ずかしさで、身体が熱くなる。 「日誌、書いてたの。…日直だったから。」 「そう。」 春山くんはこちらを見ずに、鞄を手に取って教室の後方に歩いて行った。 .
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