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私は立ちあがり、窓の方に向かった。
空にはすでに、夜の帳が下りていた。
月から離れたところに、小さな星を見つけ、ぼんやりと眺める。
春山くんと私の距離は、…きっと、月とあの星よりも、もっと遠い。
下を見ると、昇降口の方から、春山くんが歩いて来るのが見えた。
こちらを見上げる彼に、思わず手を振る。
彼が照れくさそうに上げてくれた手が、とても嬉しかった。
「誰に手振ってんだよ。」
後ろから突然声をかけられ、私は驚いて振り返った。
「…庄司くん…。いつからいたの。」
庄司くんが、窓の外を覗き込もうとしたので、私はさりげなく身体でその視線をガードした。
「さっきから、お前の後ろに立ってたよ。普通気付くだろ。」
「気付かないよ…声、かけてよ。」
私は彼の注意を窓の外から反らすために、自分の席に戻った。
日誌を書き上げようとペンを取ると、いきなり髪を引っ張られ、わたしは悲鳴を上げた。
「やっ…痛い…っ。…やめて…。」
「笹森さ、…ちょっと、これから付き合ってよ。」
「え…。」
「面白いもの、見たくねえ?」
痛みに顔をしかめながら見上げると、庄司くんは、冷ややかな目で私を見下ろしていた。
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