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バス停には、すでに長蛇の列が出来ていた。
角を曲がってその光景を目にし、俺はため息をつく。
……次にしようか。
バスを一本、見送る事に決めて、列の最後尾…やたらと大きなサラリーマンの背中の後ろに付いた。
鞄の留め金を外し、読みかけの本を取り出す。
「…お、春山っ。おはよ!」
目を上げると、目の前の大きな背中の陰から、福島大樹が顔を覗かせていた。
「おはよう。…朝から、ポッキー?」
「え?」
大樹が目を丸くする。
「口、ついてる。」
「……え、あ、…やべ、サンキュ。」
大樹は、慌てて口元に手をやった。口の端をぺろりと舐める。
「なんでわかったのかと思った。……あ、すいません、いいすか。」
後半のセリフは、大きな体のサラリーマンに向けられたものだ。
ぴょこ、とお辞儀をして、大樹が場所を入れ替わる。
「なんだよ、…いいよ、寄って来なくて。」
「そういうこと言うなよ、傷つくなあ。」
大樹は眉をハの字にし、情けない顔で言った。
俺は笑いながら、小説を鞄に戻す。
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