第1章

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バス停には、すでに長蛇の列が出来ていた。 角を曲がってその光景を目にし、俺はため息をつく。 ……次にしようか。 バスを一本、見送る事に決めて、列の最後尾…やたらと大きなサラリーマンの背中の後ろに付いた。 鞄の留め金を外し、読みかけの本を取り出す。 「…お、春山っ。おはよ!」 目を上げると、目の前の大きな背中の陰から、福島大樹が顔を覗かせていた。 「おはよう。…朝から、ポッキー?」 「え?」 大樹が目を丸くする。 「口、ついてる。」 「……え、あ、…やべ、サンキュ。」 大樹は、慌てて口元に手をやった。口の端をぺろりと舐める。 「なんでわかったのかと思った。……あ、すいません、いいすか。」 後半のセリフは、大きな体のサラリーマンに向けられたものだ。 ぴょこ、とお辞儀をして、大樹が場所を入れ替わる。 「なんだよ、…いいよ、寄って来なくて。」 「そういうこと言うなよ、傷つくなあ。」 大樹は眉をハの字にし、情けない顔で言った。 俺は笑いながら、小説を鞄に戻す。 .
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