:掘り下げてみた:

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その執念は、かつてあの日、あの時に護れなかった事に震えて、静かに冷えた慟哭を聖人の口が、聖人の声がフェイト胸に突き刺さる。 ただ傷付けたくないと、護りたいと言うのに、それの何と難しい事だろう。 傷付けたくなんて無いのに、言葉の“鞘を無くした刃”が少女の心を傷付けてしまう。 「君はっ!」 士郎が珍しく声を荒げ、聖人の行動を否定しようとする。 「俺は、大刀を喪えば、小刀を抜き」 しかし、聖人は士郎の言葉を意に介さないかのように、流暢に言葉を紡ぐ。 「小刀を損じれば、両の腕(かいな)で挑み。 それすら無くなれば、脚で。 脚が失せて、胴体と首だけに成ろうとも、相手の喉元に喰らいつく」 聖人の言っている事は、戦場で武士(もののふ)が語るようなモノ。 確かに、人と人が命のやり取りをするならば、それぐらいの気概が無くては生き残る事など出来はしないだろう。 だが、それは人ではなく、武人という機械に成り果てた末路でしかない。 そんな言葉を齢9つの年端もいかぬ少年が口にした事が衝撃だった。 そして、聖人はフェイトに背を向け、決定的な言葉を口にしようとする。 「元より、俺の身体はッ!」 聖人が言い放とうとしている事は、これ以上言えば後戻りが効かなくなるモノ。  
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