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―――すまぬ、すまぬ弓幻<ユウゲン>。
ああ、またか。
―――すまぬ、妾を許してたも。
また貴女は泣いているのですか。
―――蒼弦、すまぬ。
まだ貴女は謝っているのですか。
あの男に。
私や貴女を捨てた男に。
―――ああ、蒼弦。妾も今、そちらへ逝く。
ああ、貴女も私を捨てるのですか。
―――弓幻、すまぬ。弱い妾を赦してたも。
ああ、そんな風に微笑まなないでくださいよ。
貴女は鈍く光る刃を自身の首筋に当てて躊躇いなく切り裂いた。
赤、あか、アカ
吹き出す鮮血がまるで彼岸花のようだ。
貴女には相応しい死に様ですね。
そうでしょう?
母上。
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