理科教師(科学)

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「…あの……。」 「………?」 「…名前を聞いても、いいですか?」 少しの勇気と ほんの少しの 目を合わせた時間 「………高科(たかしな)。」 高科、先生……… 「…お前は…?」 「………岩崎、遥です。」 キーン、コーンカーンコーン… 「あ……。」 下校時間を知らせるチャイムが こんなにももどかしいだなんて 今まで、 感じた事もなかった。 ―……鞄、教室だΣ 「たか、しな、先生。」 「………。」 「ありがとう、ございました」 「………いや。」 「さようなら。」 「……さよ、なら…。」 夕日の落ちた理科室を出て 私は廊下を駆けた その足取りは軽くて きらきら輝いているような、 そんな気がした。 ―…… ガララッッ!! 「加藤先生!ごめんなさ…」 机には 紙切れが一枚、ひらり。 『無理矢理すぎたよね。 ごめんね、気を遣わせて。 今度の学年勉強会は、 来てもらえたら嬉しい。 気を付けて帰って下さい。 さようなら。     加藤』 …ごめんなさい、加藤先生。 先生は、こんな私にわざわざ時間を割いてくれて 勉強を教えてくれるはずだったのに ―…自己中だな、自分。 『人との約束は守らなきゃ』 そんな律義で 理科室なんか行かなきゃよかったのかな? ………今は… まだ、心音が激しいままで ……何も、考えられない…。 *
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